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それで、と馬を巧みに操りながら、
あれはなんなのかとロゼリンが聞いた。
馬が立派にロゼリンの足の役目を果たしてくれているため、
今では振り返って、襲い来るものの姿を目にすることもできる。
しかし、ロゼリンはそれを目にしていながら、エカテリーナに問うのだ。
「見てのとおりじゃ」
エカテリーナは、へし折ってしまうのではないかというくらい、力を込めて杖を握りしめる。
「見てのとおりっていってもなぁ、
……竜?いや、違うか」
キイキイと鳴く声が、耳障りなくらい迫っている。
大きなうねりを作りながら動く黒い塊は、竜のようにも蛇のようにも見えるが。
ざわざわと蠢く身体は不気味な濃淡をしていて、宙を泳ぐ。
「あれは蝙蝠の群れじゃ」
「蝙蝠?」
言われて目を眇めたロゼリンは、
小さな翼を忙しく動かすその群れの正体を知って、呻いた。


