「なんじゃ?」
重くなりつつある瞼を持ち上げると、驚いたことにエカテリーナは青年の腕の中にいた。
「な、な、なにをしておる!
降ろせ!降ろさぬか!!」
狼狽えて叫ぶと、青年はにっと人の悪い笑みを浮かべて言った。
「酔っぱらいは黙ってろ。
俺自ら、王城まで運んでやる。
大魔導師においては格別の待遇だろう?」
「なにを申す!愚か者!
わらわは外へ出てはならぬのじゃ!」
青年の肩を叩き、降ろせと怒鳴るが、彼は怯むことなく階段を降りていく。
開け放たれたままの石の扉を抜けようとして、エカテリーナは青ざめた。
「ならぬ!」
悲鳴とともに、頭上から犇めく異音――。
浮遊する、魔法で灯された光球が瞬きを繰り返す。
青年は不思議そうに塔の上を見つめ、
エカテリーナはその身を庇うように彼にしがみついた。