塔の中の魔女


「わらわにできることはない、帰るがよい」


結局、エカテリーナは突き放すことしかできなかった。

エカテリーナが大切に想う王がすでにこの世にいないこと、

魔法使いが絶えてしまったこと、

それらはまだ受け入れがたい事実だ。


世界から孤立したような寂しさを感じるが、

塔の中で暮らす安寧に身を任せていれば、

これ以上、外の変化を知らずにすむ。

恐ろしい事実から、目を背けることができる。


「帰れ」


エカテリーナは暖炉の火を見つめたまま、言った。