「ロココとはなんじゃ?」
エカテリーナが素朴な問いを投げながら、
ゴブレットと空のカップをそれぞれ、円テーブルに置く。
「ロココは城に来ればいくらでも見れるけど、
ん?そのカップ……」
青年が指を伸ばす先には一滴の飲み物さえ入っていない。
「まあ待てと言うに」
エカテリーナは手の中に杖を呼び出し、言った。
「マギ・ティス・バディル」
杖を振る。
光の粒が杖の先を舞って、仄かに掻き消える。
すぐに芳しいコーヒーの香りが漂い始めた。
「雪国ゆえウォッカといきたいところじゃが、
そなたは見たところ未成年、コーヒーで許せ。
わらわの好物である菓子もつけてやるほどに」
「おい、待て!
ちび、それはなんだよ!」
慌てて止める青年の前には、ゴブレットに氷をいれて並々と注がれているウォッカ。
「なにって……これはわらわの分じゃ。
年のせいかの、身体が冷えて鈍るゆえ。
時々こうして飲んでおる」
そう言って、一気に煽ると、青年が絶叫した。
「ちび――――!!」


