嬉しそうに青年がエカテリーナを見るので、満更な気がしないでもない。
塔の端に備えつけられた石の階段を上るように促した。
ぐるりと塔の内部を一周するほど上った頃、目の前にふわりと浮かぶ床が見えた。
猫毛のような柔らかな絨毯が一面に広がり、階下とは違う温もりを感じさせる。
天井に陽のような光を放つ玉が浮いている。
真向かいに柔らかな色を灯す暖炉、そして布張りの樫の椅子がふたつ。
傍らには小さな円テーブルに一人分の茶器が湯気を立てて乗っていた。
そして漂う甘い菓子の香り。
つい居着いてしまいたくなるような、心地よい部屋だった。
少女の嗜好はなかなかに洒落ていて、悪くない。
――そう、青年の表情が物珍しそうなものから、安堵に変わりゆくのを見て、
エカテリーナは満面の笑みを浮かべた。
どうやら自分の嗜好は世間とは擦れていないようだと安心して。
なにしろ、塔の中の生活が長いエカテリーナにしてみれば、
古臭いと印象を受けられるのがもっとも矜持を折られたようで傷つく。
しかし、端から見ると青年はそんな感想を抱いた様子もない。
ただ、こわごわと階段と床の狭間を見ている。


