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「……五百年?
そなた、わらわをからかっておるのか?
五百年などと、人の一生を遥かに超えておるではないか」
やがてエカテリーナが落ち着きを取りもどしてそう言うと、
青年は深くため息を吐いて呟いた。
「魔女なんて、この世に存在している時点で化石みたいなもんだろ」
小さな呟きはエカテリーナには聞こえなかった。
首を傾げるエカテリーナの腰を掴んで立ちあがらせると、
青年自らも冷たい床から立ちあがって、浮遊する二階を見あげた。
「なんじゃ?」
「あれってどういう仕組みなんだ?」
興味を惹かれたように首を伸ばす青年に、エカテリーナは不敵に笑んだ。
「わからぬか?
あれは魔法で階上を作り、部屋を拵えたのじゃ。
ここは冬になると些か寒いのでな」
「ふぅん」
青年の興味に優越感が勝り、エカテリーナは鷹揚な態度を示す。
「見てみたいか?
そなたは一応、結界を突破したことでもあるしの。
特別にわらわの部屋に招いてやらぬこともないぞ」
「本当か!?」


