「なんという無作法な輩じゃ。
結界を抜けるほどの精神力の強さは認めよう。
なれども、そなたのような野蛮極まりないものが王の側仕えを許されているとなると、
王の権威も揺らいでいると案じずにはいられない」


「なんだよ、ちびのくせにいっちょ前に王に不満か?
悪かったな、王がよりによってこんなので」


「…………は?」


聞き咎めたのかと思い、エカテリーナは耳から手を離す。

そしておそるおそる問うた。


「今、なんと申した?」


「だから、王は俺だって――」


エカテリーナの腕が小さく拳を作る。


「なんと無礼な輩よ。自ら王を名乗るなど。
わらわが王のご尊顔を忘れたと思うているのか?
王はおまえのような小僧ではない。
もっと大人で、貫禄もあって、
品もある素晴らしい方じゃ」


言って、青年の顔を殴りつけた。

小さな拳の振るう暴力は、青年にはたいした痛みをもたらさなかったが、

なにか言いたげな顔をしてエカテリーナを見つめる。