その塔は、まるで魔物が棲んでいるかのように、
尖端が鋭利で、黒々とした石壁で築かれていた。
近づくにつれ、その不気味さは増していく。
ロゼリンは馬首をそちらへ向けて走らせるのだが、
馬は嫌がるように脚を止めて首を振る。
今さら慌てても仕方ないと思い、
「頼むから、おとなしく前に進んでくれよ?」
馬の喉元を撫でて宥めながら、
ロゼリンはその不気味な塔を見つめた。
「……五百年か、ずっとこんな場所へ幽閉されるってのは、どんな気持ちなんだろうな」
ロゼリンの声は、憐れむようだ。
ときおり嘶き、歩みを止める馬は、それでもゆっくりと前へ進んでいく。
じっくり時間をかけて、
いつしか魔女の張った結界にも入って。
つまりは魔女から、侵入を許されたということではあるが、
五百年前からの定例どおり、ひとりでの謁見を許されて。
ロゼリンは間近に塔を見あげる。
魔女の住む塔に着いたのだ。