王都から魔女の住む塔までの道のりは遠い。

馬を飛ばして三日。


小国といえど、

道中には険しい霊峰が連なり、深い渓谷もある。


大国ゼルダンが、容易にその地に足を踏み入れなかったこともよくわかる道のりだ。


もっとも、近くの村に駐屯するとはいっても、塔までの距離は半日かかる。


王とその護衛隊は、二日半の時間をかけて村に辿り着いた。


そこから先は、王であるロゼリンのみで行かなくてはならない。


『塔の中の魔女との謁見は、如何なる理由があろうとも、ただひとりに限る』


五百年前に定められた王規だ。


謁見そのものは、王でなくともよい。

王命を受けた使者でかまわないのだが、

会うことが許されるのはひとりだけ。


そのように決まっている。


ロゼリンは、塔の中の魔女に自ら会うことを望んでいた。


使者を立てるでなく、自らが王城へ招聘したいと思っていたからだ。