「キサは、家戻るよね?」

「……ああ」


真冬の寒さをしのぐには到底足りない薄い布を首に巻き直して、隣に立つキサを見た。

極寒の風に揺れる白髪が儚い。
この町を出る明日には、今よりも僅かに汚れることになるだろうか。

この町には禊(みそ)ぎの場すらないから。
泥混じりの水があっても、お湯にはならない。


「ラズ、あたしはテキトーにふらついてるよ」

ユラの家は紛争に巻き込まれてなくなった。


「じゃあ俺もユラといる」

ヴァレンの家族は、幼い頃に両親を亡くしたユラを引き取った。
そのヴァレンの両親も、きっと今では会うことが叶わない。



――――他の誰も、皆