・・・はぁ・・・また・・・遅かったの・・・かなぁ・・・
いつでも私は一歩遅いんだよ。
マークの時も、今、この時も、
私が想った時には相手の心は既に違うところにいる。
気付くの・・・おっそいんだよ・・・
自分のこの自意識過剰な部分がすっごく悔しいし、腹立たしい。
どこにも行かないし、私のことを好きでいてくれてるって、
勝手に思ってた。
わたし・・・最低な女でほんとバカだ・・・
「しゃ・・・」田中さんの声が止まった。
「それも、すっげー勇気だったろ?」
遠くの方でそんな音が聞こえたけど、
私は、「どうやったらここから出られるのか」
という考えに頭をシフトしていた。
「・・・・・」目から温かい透明の水玉がこぼれて、絨毯で弾けて吸収された。
「桃華」
不意に呼ばれて顔を上げた。
目の前には祐哉の顔があって・・・
・・だってさっき、田中さんの・・・

