鈴は、一瞬何が起こったのかわからなかったが、すぐに膝や肘からじわじわと広がる痛みに自分の状態を理解した。

「大丈夫?」

「おい、平気か?」

卓也と健一が慌てて鈴に駆け寄ると、心配そうに覗き込む。

鈴は痛みに泣きそうになるのをぐっとこらえて、どうにか起き上がるとうっすらと涙を湛えた瞳を細めて笑った。

「えへへ、転んじゃった」

鈴の様子に、安堵の息を漏らしながら健一が照れ隠しに毒づく。

「ったく、お前どんくさいなー」

「もう、健ちゃん。そんな言い方ないだろ」

「だってよー」

「元はといえば、健ちゃんが走ってるときに話しかけるのがいけないんじゃないか!」

「なんだと!」

不穏な空気が流れ始めたのを察知した鈴が慌てて間に入る。