再び歩き出そうとしたけど、それは出来なかった。


だって・・・わたしの唇に、温かいものが触れていたから。


熱を帯びていく、自分の唇。


たった一瞬の出来事だったのに、それが長く感じられた。



「ご、ごめんっ! つ、つい・・・」



焦ったように、照れたように目を泳がせる。


何も、そんなに焦らなくても・・・



「いえ、気にしないでください。・・・嬉しかったですし・・・」