「さん付けじゃなくていいよ?」 「では、平助君、で」 さすがに、呼び捨てはまずいと思う。 わたしには、君付けが限界だ。 「そうしてくれると、嬉しい」 パアッと、明るくなった顔。 それを見て、わたしの顔にも笑みが浮かんだ。 明るく、和んだ部屋の中の雰囲気。 そんなことをしている間に、あの人が追い詰められていたなんて。 限界に達していたなんて・・・ わたしは気付いていなかった。 もう――――手遅れだった。