声に反応して振り返ると、至極真面目な顔をした遥登君と目が合った。はい?と目で促すと、彼はひとつ咳払いをして。




「この瞬間だけでも、蒼空を幸せにしようと思う」


その言葉とともにあたしの前に差し出されたそれ。




「え……?」


「気に入ってもらえると嬉しいんだけど」




それはぬいぐるみだった。黒がベースとなった可愛い兎のぬいぐるみ。


もしかして……。





「さっき慎一さんが作業してる時にこっそり買ったんだ。ていうか、今日の目的はこれ」



遥登君曰く、今日あたしを連れ出したのはこれをプレゼントする為だったらしい。




驚きを隠せないまま受け取ると、もふっと柔らかい感触が広がる。遥登君があたしの為に……。


嬉しくてそのぬいぐるみを手にしたままつい涙を流してしまうと、遥登君は慌てたようにあたしの肩を掴んだ。





「ご、ごめん!嫌だった……?」



あたしはふるふると首を横に振り全力でそれを否定する。



「違うんです……!その、嬉しくて」


安心させるためにグイと涙を拭って遥登君に笑顔を向ける。





「すっごく嬉しいです!ありがとうございます……!!」