私は1人娘という事もあり、

何をするにも親の期待に応えようと必死だった。


それは裏を返せば、

操り人形のような人生を送った事になる。


後悔してない訳ではないけど、

それなりに楽しい事も沢山あったから

総合的に考えれば、決して悪くないと思っている。




カップの淵に唇を当て甘い香りを愉しんでいると、


「京夜さんが何故、希和を元の生活へ戻したと思う?」

「へ?」

「ただ単に結婚が決まったから、護衛が要らなくなったとでも思ってるの?」

「それは………考えてなかったけど……」

「けど?」

「どうして急に、任務を解かれたのかは不思議に思ってたから」


母親の言うように、何かあるに違いないけど

彼も母も簡単に教えてくれそうにない。



私が女だと分かったから………じゃないよね。

それだったら、あのパーティーの後にでも解雇されていて当然だし。


じゃあ、私が幼い日の女の子だと知ったから?

昔を知っている私に護衛をさせるのが嫌だったの?

でも、それならそれで、ハッキリ言いそうなものだけど。



甘い筈のココアなのに、何故かほろ苦く感じた。