「旨いか?」

「はい、とっても!」

「そりゃ良かった」

「京夜様は何でもお出来になって凄いです!」

「フッ、あんなに散らかして、時間も掛かったのにか?」

「最初は皆、そうですよ」

「………そうなのか?」

「はい。私なんて、手を包丁で切りまくりましたから」

「は?」

「京夜様は火傷も負わず、素晴らしいです!」



………切りまくった?

おいおいおいおい………。


武術だけでなく、料理でも傷を負っていたのかよ。

…………俺が想っている以上に、きっと大変だった筈だ。



自分で作ったチョコケーキ。

見た目は何とも言えないが、味は……上出来な方だろ。


「まだ食えそうか?」

「はい、勿論です!!」

「……そうか」

「京夜様は………ご無理ですよね」

「………だな」


苦笑する彼女を横目に見ながら席を立ち、


「俺は酒にするが、おっ………」

「私は紅茶で十分です」

「そうか」


思わず、『お前』と口にしそうになった。


真実を知ってしまった今、

もうこの子の事を『お前』や『松波』とは呼べないよな。


かと言って………。