「……………え?」


視界に入る指の先には、

自分の目を疑うような文字が刻まれていた。



『 キ ワ 』



目にしたと同時に甦る記憶。

15年以上も前に、これと同じ文字を目にした事が……。


私は無我夢中でクローゼットの中からポーチを取り出した。


先日、実家に戻った際に密かに持ち帰ったそのポーチ。

中には大事にしている小物が詰まっている。


私はそのポーチからティッシュで包まれた小さなモノを取り出した。

そして、中を確かめるように

ゆっくりと、そして丁寧にそれを広げた。



中に収められているのは、宝物のヘアピン。

亡くなった祖母が手作りで作ってくれた形見の品。


長い年月を過ごしたせいで黒ずんでいる。

銀製品独特の黒ずみだが、今はそんな事はどうでもいい。


私は震える手でそれを目の前に近づけた。


『 キ ワ 』


手にしている形見のヘアピンにも同じ文字が。


見た目は全然違うそれ。


自分の手にしているヘアピンには

花の形をしたモチーフがあしらわれている。


けれど、空港で拾ったヘアピンは星のモチーフ。

土台の金属は同じ銀製だけど、

拾った方には塗装が施されている。


理由は解らないが、どう見ても祖母の品だ!