自宅へ帰宅した俺は、今日も湯船に浸かる。

それも、呆れるほど………長く。


肉体的に疲れている訳ではない。

ただ、忘れたくても忘れられない記憶を

綺麗さっぱり洗い流したくて……。


そうでもしなきゃ、気がどうにかなりそうだった。


水や湯で洗い流せない事くらい解っているのに

せずにはいられない……そんな心境だ。




長風呂だったせいか、少し身体が重い。

今日はツーリングを止めておくか。



いつもより少し早いが、

酒の準備をする為、キッチンへと向かった。


すると、ちょうど松波がつまみを準備していた。



「如何されました?」

「……今日はツーリングしない事にした」

「どこか、ご不調でも?」

「いや、気分的に……」

「………そうですか」



松波はそれ以上尋ねる様子もなく、

手際よく料理を仕上げた。



「お前も飲むか?」

「え?………あ、いえ、結構です」

「………そうか」


松波は料理をリビングテーブルの上に置き、

部屋へ戻ろうとした、その時。