『大倉いづみ』
俺の人生で、唯一汚点だと思われる人物。
後悔しても、もう遅い。
過ぎ去った日々は
決して消し去る事が出来ないのだから。
俺の記憶のあの子になりすますとは……。
腸が煮えくり返る。
奥歯をギュッと噛みしめ、必死に堪える。
ここが空港でなく人気のない場所だったら
確実にぶっ飛ばしていただろうに。
頭に血が上って声を荒げたが、
周りに視線を向ければ、恐ろしいほどの人の数。
怒り乱れた感情をどうにかこうにかセーブして、
いつもの自分を取り戻そうとコントロールする。
深呼吸した俺は、
松波が待つ車に戻ろうとすると……。
ん? 何だアレは……?
少し離れた所で、人目も憚らず男同士が抱き合っている。
2人ともスーツ姿で、
周りの視線を一身に浴びていた。
ここは空港。
もしかして、別れの挨拶か?
それにしても、男同士で長いハグだなぁ。
つい先ほどまでの怒りがどこへやら。
面白い光景につい頬が緩む。
きっと、俺と松波もあんな感じに見えてんだろうな。
暢気にそんな事を思い浮かべていると、