行きつけの蕎麦懐石・元禄庵で昼食を済ませ、

駐車場に止めてある車に乗り込むと……。


「松波」

「はい」

「車を羽田に回せ」

「はい?」

「羽田空港に回せ」

「………え?」

「チッ!何度も同じ事を言わせんなよ」

「あっ、はい!………羽田空港ですね」


突然、何を言い出すかと思えば『羽田空港』??

午後に商談が控えてるのに、

空港で何をしようというのかしら?


とりあえず、カーナビに羽田空港をセットした。


日中の都内は交通量も多く、

1時間程かかり、羽田空港に到着した。


現在の時刻、13時40分。


「用が済んだら電話する」

「え?あっ、はい」


颯爽と車から降りた彼は、

振り返る事無く、ターミナルの中へ姿を消した。



……私はどうすればいいの?

車だって、ここには停めておけない。


私は仕方なく、駐車場へ車を回した。



待つ事、数分。

未だ連絡すらなく、秋晴れの陽が降り注ぐ車内。


「……暑い。………喉が渇いた」


1人ブツブツとぼやきながら、

飲み物を探し求め、ターミナルへと向かった。