たった、ひと言。




緊張して、胸が苦しくなって。


いつも通りには、話せなかった。


必死でノートをとるふりをして、チラッと中川の横顔を盗み見る。




「ここがX=5、つまりy=28だ」




先生の話なんか頭に入らない。



それで、気付いた。


息づかいすら聞こえるほどの、この距離で。

熱くなる顔を抑えながら、思った。



あたしは中川が好きだって。




後ろの席の人に、あたしのドキドキはバレていないかな。

後ろから見たら、あたしがぎこちないのがわかっちゃうかな。


不安になったけど、この時間が終わってほしくはない。


授業残り10分の時刻を指す時計を見て、


生まれて初めて、授業が終わらない事を願った。