たった、ひと言。




キーンコーンカーンコーン



授業開始のチャイムで、みんなが席に着く。


退屈な歴史の授業を聞きながら、中川に貰った消しゴムを見る。



手でつくられた影の中で光るピンク。


そのピンクに浮かび上がる“M”。




ふと中川の方を見ると、中川もちょうどこっちを振り向いた。



自分から中川を見たくせに、いざ目が合うとどうしていいかわからない。


1人で慌てるあたしの手の中の消しゴムを見て笑った中川。



その笑顔に、溢れたのは幸せじゃなくて涙だった。




零れた涙を慌てて拭って、誤魔化すように笑う。





授業中に、目が合って。

それはあたし達しか知らない秘密みたいで。


嬉しいはずなのに、切なかったの。



“とられたくない”



…そう思った。