「……っ」
動揺して、顔がカっと熱を持つ。
先輩は、いつものようにクスっと笑って満足そうに目を細めた。
「またつけてもいいよ。
……俺にキスされたいならね」
綺麗に、そして妖美に微笑みながら、先輩がグロスをなぞり取った親指に軽くキスをする。
そんな、されたこっちが恥ずかしくなるようなキザ行為を目の前でされて、先輩を睨み上げた。
何か決定的な言葉を言い返してやりたいのに……っ!
胸のドキドキのせいか、元からのボキャブラリーのなさのせいなのか……、何も出てこない。
「セッ……、せクハラ男!!」
結局、頭のいい事なんか言えなくて、出たのは、子供のケンカで使うような言葉だけだった。
そんなあたしに、先輩が余裕のある微笑を見せつける。