恋の罠 *- 先輩の甘い誘惑 -*



「朱莉、これ」


下校時間を知らせる放送が流れて教室を出た時、相沢先輩が数枚の紙を差し出した。

受け取ると、それはノートを切ったもので。

書いてあるのは、たくさんの単語と熟語だった。


3枚の紙を見た後見上げると、先輩が微笑む。


「試験によく出る単語だから、そこは押さえておいた方がいいよ」

「……先輩、これ、わざわざ書いてくれたんですか?」


先輩は極力自分の勉強をするって言うから、一緒に勉強してたのに。

今の時間をあたしのために使ってたなら、ホントに迷惑しかかけてない。


そう思って見ているあたしに、先輩が困り顔で笑う。


「好きな子のために何かをしたいって思うのは、いけない事じゃないだろ?」

「……っ、ズルイです! そーいう言い方するの……」


“好きな子”なんて言われたら、あたしが何も言えなくなるのを分かってるくせに!


口を尖らせながら俯くと、上で先輩が笑ったのが分かった。