好きこそものの上手なれ。
それが本当なら、あたし、一生英語できないんじゃないかな……。
そんな事を考えながらも、おびただしく並ぶアルファベットに頭を悩ませて1時間が経った時。
背伸びをした仁美が「帰るかな」って言い出した。
「え、最後まで付き合ってくれないの?」
「だってあたし、朱莉と違って電車だし。
疲れきって電車にゆられるのイヤなんだよね。
金曜日は付き合ってたけどさー、その時間帯だとサラリーマンと帰宅時間かぶっちゃって最悪だったし」
「あ、そうなんだ。ごめん」
「朱莉はまだ頑張るんでしょ?」
「……うん。英語、全然分からないし。
英語が足ひっぱんないレベルまではなんとか頑張らないと」
気合いを入れて見せると、仁美が笑った後、「じゃあ頑張ってね」って教室を出る。
しん、とした教室で「よし」って独り言をもらして再び問題集に向かう。



