「山岸! お願いがあるからちょっと付き合って!」
授業が終わると同時に、同じクラスの男子に声をかける。
いっつもつるんでる山岸は、“いいヤツ”と“騒がしいヤツ”って言葉がこれ以上ないくらいに似合うヤツ。
「なんだよ、お願いって」
「いいからっ! あ、仁美。相沢先輩って何組?」
仁美が4本の指を立てたのを確認してから、山岸の腕を掴みながら教室を出る。
昼休みに入ったばかりの階段は、購買へ急ぐ生徒で溢れていた。
そんな人の波に逆らいながら、山岸に『お願い』の内容を告げる。
「マジ? 何のためにすんの?」
話を聞いた山岸が、少し興味があるのか、半分笑ったような顔で聞く。



