恋の罠 *- 先輩の甘い誘惑 -*



熱にうなされてるんじゃないかと思った。

全部夢なんじゃないかと思ったけど……、頬を撫でる先輩の手が、夢なんかじゃないことを教えてくれてた。


少し冷たい、先輩の優しい手が。


「今まではっきり言えなかったけどやっと言えた。

慣れない我慢なんかするもんじゃないね」


ほっとしたような顔で言う先輩を、涙の浮かぶ目でじっと見つめ返す。


「我慢……?」

「朱莉が先に告白してくれるのを待ってたんだ。

先に好きになった方が負けってよく言うから。

性格上、いつでも優位に立っていないと気が済まないし」

「……」


どこまでも余裕を持て余す先輩に悔しくなりつつも、もう勝てる気なんかしなかった。

さっきの告白ひとつで、もう、全部がどうでもよくなった。