「じゃあ何で今……、」

「もういいだろ? 俺の気持ちは十分話したし。

そろそろ朱莉を保健室に連れて行きたいんだけど」


先輩に言われて、ダルくて熱っぽい体をようやく思い出した。


「……はい」


先輩に差し伸べられた手を少し戸惑いながら握ると、先輩が微笑んだのが分かった。


「いつもこれくらい素直ならいいんだけど」

「……」

「まぁでも、いつもの強気の朱莉を大人しくさせるのも楽しいからいいんだけどね」


なんだか、どこまでも適わなそうな先輩に手を引かれながら、保健室までの廊下を歩いた。

誰かに見られたりしないか心配になったりもしたけど……、先輩の手を離すなんてできなくて。


図書室で手を繋いだ事を思い出しながら、2人の間で揺れる手を見つめる。

先輩の手はあたしのより少し冷たくて、気持ちよかった。



骨ばった大きな手。

優しくもしっかり握ってくれる手にドキドキして、熱が上がるのを感じた。