「意識し始めてから数日した時、裏庭に朱莉と角田がいるのを見かけたんだ。

あんな風に泣いてる朱莉を見て……、気付いたら、目が離せなくなってた」


先輩が、困り顔で微笑む。

胸がドキドキして、なんでだか涙が浮かんでた。


「ギャップってわけでもないんだけど、すっかりやられちゃってね。

朱莉をもうあんな風に泣かせたくなくて、次の日から毎日、朱莉を見張ってた」


頬を包む先輩の手。

ぬくもりから、先輩の気持ちが伝わってくるような気がした。


初めて触れる、先輩の気持ち。

だけどそれはまだ、ぼんやりとしていて核心には遠い。


だってこんなの……、簡単に信じられるわけない。


「……見張ってた?」


ひとつひとつ、説明して欲しくて聞く。

信じられないって意地を張ってるあたしを、信じさせて欲しくて。