「あんなヤツ、やっぱり騙されたって同情なんかしない! 絶対にしない!
絶対に、あの作戦決行するっ」
このままじゃ、どうやったって収まらないイラだち。
これから毎日相沢先輩に捕まるなんて、冗談じゃない。
「朱莉は一度決めたら強情だしね。いいんじゃない? やってみれば?
見てる分には楽しそうだし」
完全に失敗を前提に話をする仁美に口を尖らせた時、朝のHR開始のチャイムが鳴った。
あたしと先輩の、試合のゴングが。
その日の授業中、真面目にノートをとりながらも頭の9割を占めていたのは相沢先輩にしかける作戦だった。
まるで子守歌みたいな話し方をする現代社会の先生の背中を見つめながら、作戦を練る。
来年定年になるおじいちゃん先生の背中はもう年が隠せていない。
いつもは眠気を誘われてばっかりだけど、今日ばかりは違う。



