「言っただろ? ここは生徒会室からよく見えるって。
角田がいなくなってから朱莉が泣いてるところを、ずっとあの窓から見てたんだ」
「……覗くとか、趣味悪いです」
恥ずかしくなって八つ当たりみたいに文句を言うと、先輩はにこっと微笑む。
「朱莉は3年の間でも話題になってたから顔くらいは知ってたけど、特に気にかけてはいなかったんだ。
気が強くて生意気だって、女子の間では言われてたし」
「……」
「ただ、いじめ現場に殴りこんでいくって噂を聞いてからは感心して見てた。
けど……、いつだったか忘れたけど、いじめられてた子に怒鳴られてたのをきっかけに、裏庭で見かける事もなくなって。
朱莉の姿を見かけなくなって、初めて気にしてる自分に気付いた」
厚い雲からはすぐにでも雨が落ちてきそうで、天気予報通り夜まで天気が保つのかは怪しかった。
吹き付けてくる風が、先輩とあたしの髪を流していく。
顔にかかった髪を、先輩の指が直してくれる。
そしてそのままあたしの頬に触れた。



