薄くて形のいい唇から、頭が痺れるくらいの甘い声で言われて、緊張が高まる。
確かに、そういわれたのは覚えてる。
『次、俺の前で泣かれても、優しくするなんてできない。
……第一、朱莉には山岸くんがいるんだから』って。
けどそれは、山岸がいるんだからもう抱き締めたりできないって……、そういう意味だったハズ。
なのに……、なんで今、そんな瞳であたしを見るの……?
じっと、熱を持った目で見つめられて、なんでだかまた涙が浮かぶ。
まるで、あたしの事好きって言ってるみたいな瞳に捕らえられて、身動きが取れなくなる。
けど、そんなの自意識感情だ、きっと……きっと、そう。
そんな事を考えながらも、どこかで期待してる自分を感じながら見つめ返していた時。
先輩が、ぐっと距離を縮めた。
そして、あたしの顎を持ちあげる。



