「俺は、自分が信じる相手は自分で決めるよ。キミ達の助言なんか必要ない。
……じゃあ、報告するって事でいいかな。
ここまで妥協案を出したのに納得してもらえないんじゃ仕方ない……、」
「も、もうしないわよ……っ!
さっきの、約束するから……、だから、言わないで……っ」
相沢先輩が、ニコっと微笑む。
優しいハズの微笑みが、背筋を凍らせるくらいに冷たく感じるのはなんでだろ。
“堕ちた”
そんな言葉が聞こえそうなのは、なんでだろ……。
先輩が片手に持って無言攻撃していたケータイをパチンと閉じる。
あたしの髪を掴んで引っ張ってる、決定的ないじめ現場を映し出していた、動かない証拠。
「この画像が俺の手元にある事を忘れないように。
今後キミ達と取引するつもりはないから、次こんな現場に立ち合わせたら容赦なく処分させてもらう」
抜かりない先輩には、感心してただただため息がもれるだけだった。
蒸し暑い空気の中、涼しい顔をした先輩が穏やかに微笑んだ。



