朝の光に眩しさを感じて、ハルカは目を覚ました。
手で日の光を遮り、高くて青い空を見る。

「おはよう、ハルカ。」

二階に作ってもらった自分の部屋を出て、階段を降りていると、後ろからアズキが声をかけてくれた。

「おはよう。アズキ。」

何気無い会話だけれど、あたたかいこの家が、ハルカは大好きだった。

降りていくと、アズキの両親がいた。
父親は写真が動く新聞を見ており、母親はフライパンを片手に魔術で出来たコンロに向かっている。

この家には今は4人しかいない。
歳の離れたアズキの二人の兄は、商人として家を出ていて滅多に帰ってこないと教えてもらった。

「おはようございます、コルタさん、エリさん。」

「おはようハルカちゃん。
よく眠れた?この頃お仕事続きでしょ?体、壊さないようにね。」
エリが赤の他人の自分を気遣ってくれるのがとても嬉しくて、ハルカは笑みを溢した。
そうしていると突然、ハルカの頭に大きな手が乗せられた。

「ハルカ。お前がこの家に来て、良かったよ。」

コルタがハルカに向けて感謝を述べた。
感謝されることなど全く身に覚えのないハルカは、瞬きを繰り返した。
そんなハルカの様子を見て、アズキの父は今度はアズキの方を向いて続けた。

「なぁ、アズキ。
あまり笑わなかったお前を、笑えるようにしてくれる人なんて、そうそういないもんな?」

娘に微笑みかける父。
自分は昔にどこかに置いてきたもので、ハルカの堅い心が解けていくようで。

「ハルカちゃん、今日の最初の方は何時なの?」

エリの問いにハルカはさらりと答える。

「ひとつ向こうの道のリルさんところのおじさまが九時だって。
この頃頭が痛いらしくて。」

「九時!?ハルカちゃん、今何時だと思ってるの!!」

エリが驚いた顔をしたので彼女が指を指した壁掛け時計の方を見る。

「えっ!?八時五十分?おばさん、ご飯貰います!!」

ハルカはぱっと椅子に駆け寄り、自分の朝食をかき込む。

「ハルカ!あと十分だよ!

お客さん来ちゃう!」

「……むー……!」

もごもごと口いっぱいにパンを詰め込んだハルカが声にならない悲鳴をあげた。