ハルカが瞳をゆっくりと伏せて、アズキやトーヤの住む村へと歩き出す。
ハルカは二人を振り返ろうともしない。
「ハルカ……?」
「あたしね、昔はお城にいたんだ。」
アズキの声に被さるように、ハルカが昔を紡ぎ出す。
「「…え?」」
ハルカに追いつこうと走り出したアズキとトーヤは、思わず足を止めてしまった。
「本当に昔の話。
八歳まであそこに、召使いとしていたの。
王族の人達には、毎日会っていたわ。」
やっと、ハルカが二人の方へ振り向く。
茶色な瞳がきつい光をたたえてこちらを見ていた。
人ごみの中に三人を置き去りにして、人々は、時間は過ぎ去る。
まるで、時間が彼らにだけないようで。
いつもは耳障りなまわりの喧騒なんて二人の耳には届くはずもなく。
「……あたしは、昔王族に仕えてたの。」
「うそ……。」
でも、思い当たる節はいくつかあった。
平民の旅人で、薄汚れている生活をしているのにどこか上品で、丁寧だった。
身分に似合わない高貴な雰囲気。
──それはきっと、ハルカの育ち方。
木々がざわざわと揺れる。
風の木の葉擦れの音がやけに耳についた。
ハルカがアズキとトーヤの前をすたすたと歩く。
決して追い付けない距離ではない。
けれど、ハルカとの二メートル分離れて歩く、この距離が、果てしなく遠く感じた。
ハルカの風にはためく茶色いコートを見つめながら、無言で歩く。
「そっか……。」
ふ、とハルカが歩みを止めて、振り返った。
ハルカを上手く見れないアズキも視線をゆらしながら、ハルカにやっと返事した。
「ごめんね。ハルカ……」
アズキは、少し、ハルカの茶色い瞳が大きくなったように見えた。
「いいよ。
分からない事は聞きたくなるから。
気にしてないって言ったら嘘になるけど、構わないよ。
言わなかった、あたしの責任でもあるんだから。」
そう言う彼女は、瞳を伏せて、小さく笑った。
ハルカは二人を振り返ろうともしない。
「ハルカ……?」
「あたしね、昔はお城にいたんだ。」
アズキの声に被さるように、ハルカが昔を紡ぎ出す。
「「…え?」」
ハルカに追いつこうと走り出したアズキとトーヤは、思わず足を止めてしまった。
「本当に昔の話。
八歳まであそこに、召使いとしていたの。
王族の人達には、毎日会っていたわ。」
やっと、ハルカが二人の方へ振り向く。
茶色な瞳がきつい光をたたえてこちらを見ていた。
人ごみの中に三人を置き去りにして、人々は、時間は過ぎ去る。
まるで、時間が彼らにだけないようで。
いつもは耳障りなまわりの喧騒なんて二人の耳には届くはずもなく。
「……あたしは、昔王族に仕えてたの。」
「うそ……。」
でも、思い当たる節はいくつかあった。
平民の旅人で、薄汚れている生活をしているのにどこか上品で、丁寧だった。
身分に似合わない高貴な雰囲気。
──それはきっと、ハルカの育ち方。
木々がざわざわと揺れる。
風の木の葉擦れの音がやけに耳についた。
ハルカがアズキとトーヤの前をすたすたと歩く。
決して追い付けない距離ではない。
けれど、ハルカとの二メートル分離れて歩く、この距離が、果てしなく遠く感じた。
ハルカの風にはためく茶色いコートを見つめながら、無言で歩く。
「そっか……。」
ふ、とハルカが歩みを止めて、振り返った。
ハルカを上手く見れないアズキも視線をゆらしながら、ハルカにやっと返事した。
「ごめんね。ハルカ……」
アズキは、少し、ハルカの茶色い瞳が大きくなったように見えた。
「いいよ。
分からない事は聞きたくなるから。
気にしてないって言ったら嘘になるけど、構わないよ。
言わなかった、あたしの責任でもあるんだから。」
そう言う彼女は、瞳を伏せて、小さく笑った。

