「多分この子には昔に身に付けすぎて、無意識でやっているんだと思うわよ。

無意識だし、そこそこ力のある魔術師だから魔力がほとんど見えないし分からないでしょう?」

ナナセが答えに詰まって困っていると、彼女の代わりにスズランが答える。

その答えに、アズキはもう一度銀髪の少女を見て、また獅子の少女を見上げる。

「そうだね。

ナナセから出ている水色の魔力は使う時しかほとんど見えない。」

魔術を使うときだけふわりと彼女を彩る淡い空色をした空気。
そんな魔力を見つめて、アズキはふわりと笑う。

もちろんこれは魔力を持たない黒猫には見えていない。
黒猫も彼女を同じように見るが、そんなものの変化は全く分からない。

でも辛うじて見えるトーヤはまたその現象にやる気を起こす。

「もし、それくらいに俺もなれたら、ナナセくらい強くなれる?」

「ええ。」


なれるよ、と大きく頷いたスズランに、褐色の瞳がキラキラと輝く。

「よし、俺は負けない!
スズラン、お願いします!」

やってやる、と意気込んだトーヤにナナセやアズキが笑った。


トーヤとスズランで修行の再開のために訓練場の真ん中へと行ってしまい、残された3人。

アズキがナナセの隣へ寄っていく。

「ありがとうね、ナナセ。

ここに連れて来てくれて、ありがとう。」

言葉を切って、ふわりと笑う。

「私、この力の使い方が大分分かってきたよ。
お陰で、魔力に飲まれなくてすみそうだよ。」

その笑顔に、きゅっと唇を引き結んで悲しい瞳をするナナセ。
その瞳の奥を見据える茶色い瞳。

「強くなって、ナナセの隣に立つのが私の目標なの。

きっと私は戦いは得意じゃない。
私は私なりの方法で、ナナセの味方になりたいの。

私も、頑張るね。」

悲しい瞳をしている自分が情けなくて、彼女の決意にナナセは精一杯の、泣きそうな笑顔を返した。