空色の瞳にキスを。

武器を片付けて歩み寄ってきた二人に、獅子の女がいつもの笑みで出迎える。

「お疲れ様。」

さばさばとしていて、何でも包み込んでくれるような、そんな。

その笑顔につられて、声無く微笑んだ彼女の銀髪が揺れて、空色が柔らかな色へと戻る。

「ルグィンも、お疲れ様。
勝てて良かったじゃないの。」

そんな獅子の台詞に、硬かったルグィンの表情が僅かに緩む。

無愛想な、表情を生むのが苦手な彼の鋭い光を含む瞳が、ほんの少し柔らかくなる。

「あぁ、勝てて良かった。」

口調もいつもよりも穏やかで。

そんなほんの少しの変化が黒猫の喜怒哀楽を表すのだと、やっとトーヤは掴み始める。

酷い、なんて彼女にしてはおどけて、隣に佇む黒髪の少年に向けて頬を膨らませたナナセ。
空色をした少女の瞳を見てスズランと彼が笑うその仕草も、いつもよりも優しい雰囲気を纏っている。
今は鼻で笑うような、でも穏やかな笑い方をしている黒髪の少年の戦う様は強くて、速くて。

あんな風な闘い方ができるようにになれたら、と強い憧れを抱いた。

ルグィンの隣にいたナナセが、トーヤのキラキラした少年らしい表情に笑顔を浮かべる。

「トーヤ。」

「は。」

名前が呼ばれたことに驚いたトーヤの返事は、中途半端になってしまう。
急に大人びた容貌になったが、子供のようなトーヤの表情を見てナナセはくすりと笑って口を開く。

「ルグィンには負けちゃったけど、あたしの今の闘い方。

魔術を使いながら闘うんだけど…。
トーヤにもできると思うの。

魔力で自分を強化して、強くすれば負けないよ、トーヤだって、できるよ。」

「本当…?」

ぽかんとするトーヤに、ナナセが微笑む。

「うん、本当よ。

もしかしたら、あたしやルグィンより強くなって、追い越しちゃうか…いたっ…。」

ぺしん、と軽い音がして、大きな手が銀髪の頭を後ろへ引き寄せて、彼女を苦しい体勢にしてしまう。
彼女を言葉を継げない体勢にしてしまうと、鋭い瞳で黒猫はトーヤを睨む。