空色の瞳にキスを。

金色の瞳をした黒猫と、空色の瞳をした少女とが、目を合わせて静かに向かい合う。

黒髪の少年の手には少し細身で黒光りする長めの双剣。
銀髪の少女の手には細身の白いレイピア。

手に持つ武器までも、二人の姿みたいに正反対で。

伏せた瞳を上げて、ふわりとナナセが場違いに微笑んだ。

「よろしくね。」

その姿に、アズキはすごく心配になる。

─黒猫さん強そうなのに、そんなぼんやりしていたら怪我しないかな…。

すっ、と金色の元から冷たい瞳が、更に色味を無くした。
構えもなく突っ立っている銀髪の少女へ、襲い掛かる。

アズキが声にならない悲鳴をあげた。

そんな茶髪の少女の心配をよそに、それを屈んでかわす。
ひらりと飛び上がって、剣を交える。

キン、と音が重なる。

剣が交わったかと思えば、宙へとどちらかが舞い上がる。
まるで、舞を舞うようなそれは二人は真剣なのに、アズキの目には綺麗に映った。

─銀の色と、黒の色がきらきらしてて。

─戦いなのに。


「アズキ、そんなに心配しなくてもいいわよ。

あの子、伊達に8年国から逃げてきている訳じゃないんだから。
相当強いわよ?」

にぃ、と弧を描いた唇に安心しても、また息を止めた。

また金属の高い音が部屋に響き渡って、黒猫の双剣と王女の片手剣が交わる。
彼女の持つ刀の白い光の奥に、強い瞳がある。

真剣で、揺らがない澄んだ青。

それを余裕で睨み返す金色もまた、芯のあるいつもと変わらない強い瞳。


埒が開かないと思ったのか、ナナセが後ろへ飛び、距離を取る。

瞬間、銀が消えてルグィンの懐へと現れる。
瞬間移動に見えてしまうような彼女の高速移動も黒猫は見切って、刃の先を追いつつ軽々と避ける。

勢い余ったナナセは差し出した剣の方向へと飛んでいくが、途中で体制を立て直し、反転してまたルグィンと対峙する。


たん、と二人がまた鳴らした足音は調子よく部屋に響くが、肝心の二人の姿はトーヤには辛うじて見えるほど。
アズキに至っては鮮やかな残像ばかりが残って、二人の姿をまるで追えない。


二人の闘いは最初は見えていたのに、だんだんと追えない速さに辿り着きつつあった。