翌日、アズキとトーヤ、ハルカは商店街へ買い物へ出かけた。
まだ安静にしていなければならないサラへのお見舞いや、夕食の野菜などのお使いである。
トーヤとアズキは昔から家や年が近く、仲が良かった。
今はそこにハルカを入れて、三人でいる。
急に来たハルカだけども、何かふたりを惹き付ける何かがあった。
買い物の途中、ふとアズキは隣を歩くハルカに尋ねる。
「ハルカって、いつから旅をしているの?」
なんとなく、本当に適当に選んだ会話を繋げるためだけの話題。
けれどほんの一瞬だけ、問われたハルカの瞳が揺れた。
歩く足を止めずにすぐにアズキに視線が戻る。
「あたしの親が亡くなった八歳から。」
なんの気負いもなく、ハルカの口から零れ落ちたそんな言葉にアズキは次の言葉を躊躇った。
躊躇いなんて知らずに、トーヤが口を開いた。
「……じゃあ、こんな子供一人じゃ住みにくい世の中で、ずっと魔法の医者をしてるの?」
「……そう。
けれど、医者とは限らないよ。
色んな事があったけど、もうずっと一人で旅してるかな。」
ハルカは何かを懐かしむように遠くを見て微笑んだ。
医者でない仕事もそつなくこなす、なんて意味を意図した訳では無い筈だが、アズキはハルカの才を感じとる。
「ハルカって昔は、旅をする前は何をしてたの?」
トーヤが遠くを見つるハルカに尋ねた。
尋ねてからアズキとトーヤはふたり、顔を見合わせてはっとした。
なんだか触れないことが、暗黙だったから。
「トーヤっ……。」
「聞きたい?」
トーヤをアズキが咎めるが、ハルカは気にしていないようで。
ハルカが立ち止まり、アズキを見つめる。
ハルカの黒い髪が風になびく。
気にしていないなんて、アズキの思い違いだったらしい。
ハルカの茶色い瞳は真剣だった。
風がざわざわと木々を揺らす。
「俺、ハルカの昔の話聞きたい!」
沈黙に耐えられずトーヤがわざと大きな声で言う。
数十秒の、沈黙。
トーヤがまた耐えられなくなった頃、アズキが決意を秘めた目でハルカを見た。
「アズキ?」
小さくハルカが呟く。
ごくりと唾を飲み込み、アズキがハルカを見つめて言った。
「……ハルカ。私も聞かせてもらっても、いい?昔のハルカが、知りたい。」
まだ安静にしていなければならないサラへのお見舞いや、夕食の野菜などのお使いである。
トーヤとアズキは昔から家や年が近く、仲が良かった。
今はそこにハルカを入れて、三人でいる。
急に来たハルカだけども、何かふたりを惹き付ける何かがあった。
買い物の途中、ふとアズキは隣を歩くハルカに尋ねる。
「ハルカって、いつから旅をしているの?」
なんとなく、本当に適当に選んだ会話を繋げるためだけの話題。
けれどほんの一瞬だけ、問われたハルカの瞳が揺れた。
歩く足を止めずにすぐにアズキに視線が戻る。
「あたしの親が亡くなった八歳から。」
なんの気負いもなく、ハルカの口から零れ落ちたそんな言葉にアズキは次の言葉を躊躇った。
躊躇いなんて知らずに、トーヤが口を開いた。
「……じゃあ、こんな子供一人じゃ住みにくい世の中で、ずっと魔法の医者をしてるの?」
「……そう。
けれど、医者とは限らないよ。
色んな事があったけど、もうずっと一人で旅してるかな。」
ハルカは何かを懐かしむように遠くを見て微笑んだ。
医者でない仕事もそつなくこなす、なんて意味を意図した訳では無い筈だが、アズキはハルカの才を感じとる。
「ハルカって昔は、旅をする前は何をしてたの?」
トーヤが遠くを見つるハルカに尋ねた。
尋ねてからアズキとトーヤはふたり、顔を見合わせてはっとした。
なんだか触れないことが、暗黙だったから。
「トーヤっ……。」
「聞きたい?」
トーヤをアズキが咎めるが、ハルカは気にしていないようで。
ハルカが立ち止まり、アズキを見つめる。
ハルカの黒い髪が風になびく。
気にしていないなんて、アズキの思い違いだったらしい。
ハルカの茶色い瞳は真剣だった。
風がざわざわと木々を揺らす。
「俺、ハルカの昔の話聞きたい!」
沈黙に耐えられずトーヤがわざと大きな声で言う。
数十秒の、沈黙。
トーヤがまた耐えられなくなった頃、アズキが決意を秘めた目でハルカを見た。
「アズキ?」
小さくハルカが呟く。
ごくりと唾を飲み込み、アズキがハルカを見つめて言った。
「……ハルカ。私も聞かせてもらっても、いい?昔のハルカが、知りたい。」

