火のつく軽い音がして、部屋の四隅を優しく照らし出した。

その光は魔術の光だからか、火よりも白く優しく、一切の暗闇をなくしてしまう。


暗闇に目が慣れてしまっていた5人は急に不思議な魔術の光に包まれ、咄嗟に目を閉じたり、目をかばったりする。

数秒後、恐る恐る目を開けて、ナナセは感嘆に似た声を漏らす。

確かにこの部屋は綺麗とは言い難かった。
それでも茶色の使い込まれた木の床は手入れが行き届いており、明るいランプの光をキラキラと反射させていた。

明るすぎず暗すぎないその光に包まれた、埃の被っていない木目の美しい床板。

古びた木造のこの部屋は、どこか威厳を秘めていて。

どうしてか四人の背筋をぴんと伸ばす。


板張りの床にはほとんど何も置かれていない。

目がいくのは白塗りの壁にかけられた様々な武器だ。
槍や細身の片手剣、大きな両手剣、練習用の木刀。

それらから目を離せないでいるのはトーヤ。

憧れの眼差しで入り口に立ち止まったまま、見上げている。

彼の目の前で同じく立ち止まり、空色の瞳の彼女は張り詰めた空気を肌で感じて深く吸い込んだ。
目を閉じた彼女の胸がゆっくりと上下して、開かれた目はいつもとは少し違って。

茶髪の少女の隣で、この部屋の独特な空気を吸い込んだナナセの瞳が、だんだんと青さを増していく。
淡い空色が、ぴんと張り詰めた空気に同調したように澄んでいく。

澄みきった深い空色の瞳のその少女は、遠くを見つめた真剣な面持ちをしていた。


優しい親友の女の子が、武人の表情をしていく。

それをじっと隣で見ていたアズキは、ごくりと唾を飲み込む。


「ねぇ、スズラン。」

ゆっくりと口を開いた銀の少女。

その声はいつもの儚さを残しつつ、どこか折れない芯を持っていた。
一歩踏み出して、見えない何かを手に乗せるように右手を差し出す。

「ここの空気、魔術の色が真っ白。

澄んでて…綺麗。」

振り返りざまに少女がスズランにふわりと微笑んだ。

肩をやっと越えた銀色がふわりと揺れる。


「そうでしょう?
上の階にある訓練場よりももっと純粋に、強くなるための場所よ。」

彼女の淡くも芯の強い雰囲気に臆せずに獅子の少女は銀髪の少女を見詰める。

スズランは部屋の隅にランプを置いて、入り口に佇む彼らを手招きする。


「さぁ、始めるわよ。」