アズキがハルカに何と言っても祖母サラが見たであろうものの話をしてくれなかった。
サラは、孫のアズキから見ても不思議な人だった。
月に数回は居なくなるし、彼女より幾回りも年下の屈強な若者に指示を出している姿を一度見てしまったこともある。
ある方面で敬われているらしい扱われ方に、底知れなさを覚えたこともある。
けれどアズキたち孫の前では屈託なく笑うから、それも良いかとその光景は心の内に秘めている。
それに彼女は自分のことを語ることをさほど好まないから、孫のアズキすらサラがどんなひとか、分かっていない。
人の過去を魔力で覗ける、なんて初耳だ。
ハルカの何を見たら、ハルカがあんなに動揺し、祖母があんなに申し訳なさそうに伺いを立てねばならないのだろうか。
──私はナナセを知らない。
魔術の才があって、旅人で──あとは、と探せど見つからない。
その魔術さえ人を救う以外で人に魔術をかけたくはないと、滅多なことがない限り人前で見せてくれない。
大体ナナセも自分を語らない性質だから、今一番の親友のことはほとんど知らない。
こんなときだから、いつも考えないようにしていた思考に辿り着く。
──ハルカはどこから来た、何者なんだろう、と。
ハルカは二月ほど前、この町にふらりと現れた。並外れた医療魔術の技術ですぐに有名になった。
アズキやトーヤは、そんなハルカに巻き込まれたうちの一人だった。
ハルカは他の人たちとは少し、違った。
どこか憂いを帯びた雰囲気。
漆黒の肩まである綺麗な髪も、平民なのにどこか高貴な印象を与える。
それでも、あたたかくて優しい人だ。
もしも今のハルカが偽りの彼女だとしても、私の知っているハルカが、アズキにとってのハルカだ。
「……アズキ、」
後ろから心地よいあたたかな声がした。
「ハルカ。」
彼女のお馴染みの茶色のコートに安心し、彼女の方へ歩き出す。
自分にはない強さを秘めたハルカの隣は楽しく、あたたかかった。
きっと私は、いつかこの関係が崩れるなんて思いたくないだけだ。
なんとなく、アズキは漠然とした考えに至った。
サラは、孫のアズキから見ても不思議な人だった。
月に数回は居なくなるし、彼女より幾回りも年下の屈強な若者に指示を出している姿を一度見てしまったこともある。
ある方面で敬われているらしい扱われ方に、底知れなさを覚えたこともある。
けれどアズキたち孫の前では屈託なく笑うから、それも良いかとその光景は心の内に秘めている。
それに彼女は自分のことを語ることをさほど好まないから、孫のアズキすらサラがどんなひとか、分かっていない。
人の過去を魔力で覗ける、なんて初耳だ。
ハルカの何を見たら、ハルカがあんなに動揺し、祖母があんなに申し訳なさそうに伺いを立てねばならないのだろうか。
──私はナナセを知らない。
魔術の才があって、旅人で──あとは、と探せど見つからない。
その魔術さえ人を救う以外で人に魔術をかけたくはないと、滅多なことがない限り人前で見せてくれない。
大体ナナセも自分を語らない性質だから、今一番の親友のことはほとんど知らない。
こんなときだから、いつも考えないようにしていた思考に辿り着く。
──ハルカはどこから来た、何者なんだろう、と。
ハルカは二月ほど前、この町にふらりと現れた。並外れた医療魔術の技術ですぐに有名になった。
アズキやトーヤは、そんなハルカに巻き込まれたうちの一人だった。
ハルカは他の人たちとは少し、違った。
どこか憂いを帯びた雰囲気。
漆黒の肩まである綺麗な髪も、平民なのにどこか高貴な印象を与える。
それでも、あたたかくて優しい人だ。
もしも今のハルカが偽りの彼女だとしても、私の知っているハルカが、アズキにとってのハルカだ。
「……アズキ、」
後ろから心地よいあたたかな声がした。
「ハルカ。」
彼女のお馴染みの茶色のコートに安心し、彼女の方へ歩き出す。
自分にはない強さを秘めたハルカの隣は楽しく、あたたかかった。
きっと私は、いつかこの関係が崩れるなんて思いたくないだけだ。
なんとなく、アズキは漠然とした考えに至った。

