裸足で柔らかな絨毯の感触を感じながら歩く。

その心地よさはどこか自分を夢心地にさせて、現実感を奪ってしまう。

ふわふわと雲の上を歩くみたいにして、窓辺まで来た。


漏れてくる月明かりによって、不思議な光に染まったカーテンに触れる。
カーテンをそっと引いて、夜の空を見上げる。


細い三日月と満天の星空を見ていると、いつもみたいに冷たい空気に触れて、空を見たいと思った。
この屋敷にはベランダがあって、窓を開けっぱなしにしなくても良かった。
閉めてしまえば、アズキを冷やさずに済む。

鍵を開けて、ガラス張りの大きな窓を開ける。

開けた途端に冷たい風が部屋へ流れ込んで、彼女の銀髪を宙に遊ばせた。

飛び込んできた冬の空気に空色の瞳を輝かせながら彼女は笑んで、床と同じ高さの低い窓枠を跨ぐ。

ベランダに降り立ち、冷たい石の感触を両足で感じる。


眠っていた体に、芯まで覚めるような冬の空気。

シーツをマントみたいに被ってしまえば、風邪を引くほど寒くはない。
時折吹く風にワンピースの裾やくるまったシーツの裾がはためく。
星を集めたような銀が、月明かりの下で儚く輝く。

寒い寒いと皆が言うこの空気が彼女は好きだった。

キンと冷えた空気が頭を冷やして、考えをまとめてくれる。

考え事をするのはいつも夜空の下。

何故かは知らないけれど、一番落ち着いて考えることができる場所だった。