空色の瞳にキスを。

─もしかしたら信頼していると思っていても、怖かったのかもしれない。

─頼った人に裏切られるのが怖かったからかも知れない。

仲間だ、とはっきり言われて泣いてしまったのはそのせいだろうと自分の心を分析する。

分析でもしなけりゃ落ち着いていられない。


─なんであたしは抱き締めたの。

体だけ捻って黒猫を抱き締めてから考えてももう遅い。
頭が真っ白になって、がちがちに緊張する。
ナナセは自分の行動が理解できなくて。
真っ赤になった顔を隠したくて、ルグィンの肩に顔を埋める。

「ナ、ナナ…。」

初めて自分から触れてきた動作がこれだなんて、それはそれで黒猫の思考を停止させる。

離れようとしないナナセの背中に、躊躇いながら右手を回す。


同じことでもするのとされるのとでは大違いだと、ルグィンは思った。

「なにして…。」


かろうじて出したルグィンの言葉の裏で、小さな啜り泣きが聞こえたからそっと銀髪に、左手を添える。

身体は全部黒猫に預けているナナセは、身長差でぶら下がるようになっている。

とんとん、とまた落ち着かせるために軽く頭をたたいて、ナナセの啜り泣きが止むのを待った。


泣き止んでから数分たったのだろうか。

落ち着いたかと思ってルグィンは彼女に声をかけるが、返事がない。


「ナナセ…?」

とんとん、と肩を揺らしても返事がない。

「…すぅ。」

そんな寝息が聞こえてきて、ルグィンは脱力感に襲われた。


─全くといっていいくらいに意識されていないらしい。

力が抜けた体でナナセを抱え直す。


─むしろ、安心する場所か。

そう思えばなんとか悲しさを振り払うことができた。