空色の瞳にキスを。

その声に秘められた決意に気付いたルグィンはその体勢のまま頷いた。

「そうか。
一人で抱えるなよ。」

そんな低い声が鼓膜を優しく震わせて、ぽんぽん、と頭を軽く撫でられる。

ナナセはそれが心地よくて目を閉じる。

大事な話をしているのに、どこか優しい空気が包む。

「うん、ちゃんと自分で考えて、みんなに相談するね。」

静かな空気に決意は溶けても二人の間には確かに残って。

「あぁ。
いつでも力になるから。
話を聞くだけでもいつでも聞くから。」

彼女の声にそう返すルグィン。
ひとつ間をおいて、言いにくそうに銀の少女が口を開いた。

「ねぇ、ルグィンはなんであたしをそんな風に助けてくれるの?

話を聞いてくれて、相談に乗ってくれるの?」

そう問われた少年は、答えられなくて口を閉ざした。

抱き締めていた体を、ルグィンがナナセの肩に手を添えて、ゆっくりと離す。

力を入れて抱いていた彼女を自由にすると銀髪の少女はゆっくりと離れていく。
互いの熱が、淡く抱擁の余韻のように互いの身体に残る。

ナナセはルグィンの服の裾を無意識に握りしめて、これから聞かされる言葉を不安そうに待つ。
黒猫の少年はその空色の瞳を見据えながら、いくらか考えて言葉を選ぶ。

「俺はお前に闇に落ちてほしくないから、隣にいるんだ。
ナナセが正しいと思っているから。

…それよりもまず。

俺はナナセが仲間だと思っているから、手助けしてる。」

淡い青の瞳が食い入るように黒猫を見上げる。

感情は飲み込んで、彼は伝えたいことだけ紡いでゆく。
それでもルグィンは自分の頬が染まるのを感じた。

恋情は伝えたくないけれど、言葉の端に含みそうで、言葉を上手く選んでいく。

真剣な金色の瞳と、怯えたような不安そうな空色の瞳が交わる。

「俺はお前に力を貸したくて、貸してる。

利用したくて隣にいるんじゃない。」

スカイブルーの瞳が、安心したような色を帯びて。

ルグィンの目の前で空色の瞳がぐらりと青さを湛えて滲んだ。

引き結んだナナセの薄い唇が震えて、その唇のすぐそばを涙が伝う。


そして彼の首に彼女の細い腕が回って──。