「ねぇ、どうしよう。
あたしはみんなといたいのに、そう願ってるのに…。
あたし、みんなといると、みんなを不幸にさせちゃうよ…。
あたしはみんなから大事なものをいっぱい奪っちゃう…。
アズキやトーヤから家を、ルグィンからは友達を。
スズランなんか、大怪我したもん…。」
ふ、とナナセの息の漏れる気配がして、ルグィンの鼻に涙の匂いがツンとする。
袖を握りこむ少女の手が強くなったのを黒猫は音で感じる。
「ねぇ…どうしよう?」
涙混じりの声が冷たい部屋の空気に染み込んでいく。
「大好きな人達があたしを選んでくれるのは嬉しいのに…。
嬉しいのに、大事なものを捨ててまでついてきてくれるのは悲しいの…。
後悔していないって言われたって、それでも悲しい。
だからと言ってみんなを突き放して、昔みたいに一人で歩くことが出来ない自分が嫌い…。」
─優しさを、温もりを知ってしまったから。
─もうあの頃には戻れない。
涙を見せるのは弱いことだと思うナナセは、無意識に歯を食い縛る。
それでも漏れる彼女の嗚咽が耳の良いルグィンには鮮やかに聞こえる。
彼女の声は、聞いていて切なくて悲しい。
ルグィンは大事なものを選びとって来ていると信じているから。
不幸にさせているなんて。
そんなこと言ってほしくないと願う。
「なぁ、ナナセ。」
黒猫が名を呼ぶと、銀髪が彼の頬をくすぐる。
「俺は、この道で後悔はしていない。
それは、お前の心が正しいと思うから。
後悔していないから。
俺を不幸にしてるなんて、言うな。
俺は不幸だなんて一度も思っていないから。」
そう言いながら痛みを分けてもらうようにルグィンは右手でナナセの背中をさすり、左手で頭を優しく撫でる。
すると、うん、と彼女の小さな声が聞こえてきた。
「そうだね。
あたしが悪いと思っていたって、みんながそうだとは限らないよね。
そうでないと、いいな。」
皆が恐れる異形の前が、彼女の素直になれる場所。
本心をぼろぼろと、彼女は紡ぐ。
あたしはみんなといたいのに、そう願ってるのに…。
あたし、みんなといると、みんなを不幸にさせちゃうよ…。
あたしはみんなから大事なものをいっぱい奪っちゃう…。
アズキやトーヤから家を、ルグィンからは友達を。
スズランなんか、大怪我したもん…。」
ふ、とナナセの息の漏れる気配がして、ルグィンの鼻に涙の匂いがツンとする。
袖を握りこむ少女の手が強くなったのを黒猫は音で感じる。
「ねぇ…どうしよう?」
涙混じりの声が冷たい部屋の空気に染み込んでいく。
「大好きな人達があたしを選んでくれるのは嬉しいのに…。
嬉しいのに、大事なものを捨ててまでついてきてくれるのは悲しいの…。
後悔していないって言われたって、それでも悲しい。
だからと言ってみんなを突き放して、昔みたいに一人で歩くことが出来ない自分が嫌い…。」
─優しさを、温もりを知ってしまったから。
─もうあの頃には戻れない。
涙を見せるのは弱いことだと思うナナセは、無意識に歯を食い縛る。
それでも漏れる彼女の嗚咽が耳の良いルグィンには鮮やかに聞こえる。
彼女の声は、聞いていて切なくて悲しい。
ルグィンは大事なものを選びとって来ていると信じているから。
不幸にさせているなんて。
そんなこと言ってほしくないと願う。
「なぁ、ナナセ。」
黒猫が名を呼ぶと、銀髪が彼の頬をくすぐる。
「俺は、この道で後悔はしていない。
それは、お前の心が正しいと思うから。
後悔していないから。
俺を不幸にしてるなんて、言うな。
俺は不幸だなんて一度も思っていないから。」
そう言いながら痛みを分けてもらうようにルグィンは右手でナナセの背中をさすり、左手で頭を優しく撫でる。
すると、うん、と彼女の小さな声が聞こえてきた。
「そうだね。
あたしが悪いと思っていたって、みんながそうだとは限らないよね。
そうでないと、いいな。」
皆が恐れる異形の前が、彼女の素直になれる場所。
本心をぼろぼろと、彼女は紡ぐ。

