空色の瞳にキスを。

今自分が考えたことが当たって欲しくないと、そんな願いを込めて三人を見渡す。


視線が交わったのは、強いスズランの瞳だけ。

あとは俯く空色と閉じられた金の瞳。


ゆらゆらとスカイブルーを揺らす彼女は、この先の答えを知っている。

だけど知っていることでも口にされるごとに、人に聞かされるごとに、彼女の中で現実味を帯びていく。


「そう。

きっとナナセは、この国を、世界を揺らす。


この子は未来を握った大事な人間よ。」


彼女の口から、真剣な声が滑り落ちた。


スズランに念を押されて、はっきりと口にされたこの言葉。

それは確かに自分のことで、彼女の声度に、心臓を捕まれたような心地がする。


ナナセはぎゅ、と目を瞑る。

トーヤは嫌な予感が当たり、固まる。

ルグィンは表情を崩さずにす、と視線を逃がす。


それは何かの宣告みたいに、それぞれの心に根を張る。


「さ、分かった?」

すぐに聞こえた獅子の少女の問いかけに、トーヤがこくりと頷けば、スズランは雰囲気を断ちきるように立ち上がった。

彼女の髪がトーヤの目の前で揺れる。

視界に映った綺麗すぎるその髪は少しだけ、どこか虚しくて。


さっきの話の内容で頭の中はいっぱいで。

彼女の動きに焦茶の目は付いていかない。


「次はトーヤさん、あなたの部屋を案内するわ。」

スズランは嫌に明るい声を響かせ廊下へ繋がる扉へと向かう。

さぁ、と扉を開けてトーヤを廊下へと獅子の女が導く。

部屋は貰いたいところだったので、トーヤは椅子から立ち上がり付いていく。

スズランとトーヤの二人だけの会話になってしまっていることに違和感を覚えて少年が振り返る。


「ナナセたちは行かないの?」

不安そうな顔をした少年が銀の少女を見つめる。

彼女はそれにふわりと笑って言葉を返す。

温かな笑みだけど、いつもより少しだけ影が濃くて。


「うん、あたしはここにいるから。
案内してもらっておいで。」


銀を揺らしてそれでも明るく言う彼女に、トーヤは引き下がることはできなかった。

小さく頷いて、ドアノブを開けて待つスズランの元へ小走りで寄っていく。


「じゃあ、いってらっしゃい。」

部屋の中で少しひきつった笑みを浮かべた少女が手を振った。

振り返りながら少年は小さく手を振り返した。