空色の瞳にキスを。

少しだけ打ち解けたようなその雰囲気。

加わることはしなかったけれど、スズランの後ろでそんな会話を聞いているのはなんだか心地よかった。

アズキとトーヤと三人でいた時とも、スズランとルグィンと三人でいた時とも違う。

少しだけ違って、少しだけ柔らかくて。

ふ、と銀の少女の口元に笑みが浮かんだ。

その笑みは、真剣に話し始めた獅子の少女の声音に消される。

「アズキさんの台詞ね。

…未来が視えないって、あの台詞。」

そう口を開いた彼女の声が、少し震えていた。

話し始めた獅子の女の強い瞳を、トーヤはまっすぐに見据える。

その彼女の隣を見遣れば、俯きうかない顔をした銀の少女。


「未来が視えないと言うのはね。」

赤い綺麗な衣装から覗く彼女の白い手が、固く握られた。

まるで、これから言うことを畏れるように。


「未来が決まっていないということをさすのよ。」

「─え…。」

決まっていないとは、どういうことだろう。

自分にはたくさん未来があると思っているのに、まるで、まるで。

─決まっているみたいじゃないか─。


未来に起きる物事が視える、そんな力を秘めた先見の少女が側にいるのに。

それでも自分の未来は全く決まっていないと信じていた、そんな少年。


明かされ始める世界の現実は、大人になりきれない少年には少し苦しくて。

戸惑いを露にしたトーヤの表情を見て、ナナセは胸を痛める。


─王家で。

─王女で。

─闇に近いあたしにとっての当たり前の現実。


─それは、やっぱり皆が同じ現実を知っているとは限らないんだ─。