空色の瞳にキスを。

アズキの涙が落ち着いた頃、スズランが尋ねた。

「私の力を借りて、この世界で生きる覚悟は出来た?」


アズキはぎゅ、とナナセの服の袖を掴んで赤と茶の瞳をスズランへと向ける。

戸惑いはまだ残っているが、先見の少女は芯の強い瞳でスズランの問いに頷いた。


「さっきよりは、大分できたよ。」


その答えに、獅子の少女は柔らかく微笑む。

「そう…。良かったわ。」


トーヤは窓から見える降り始めた雪を見ながらその会話を聞いていた。

「お陰で、後悔しないで前に進めます。」

泣き腫らした目を擦りながらアズキはそう言った。

「決意をまた迫るようで悪いんだけど…。」

言い辛そうに獅子の少女が口を開いた。


「魔力はもとには戻らない。
育てていくしか方法はない。」

真剣味を帯びた声でそう続けた。


スズランのその答えに、リョウオウの二人は揺らぎはまだあるものの、しっかりと頷く。

「分かってます。」
「あぁ、知っています。」


アズキを待った時よりも、真剣な金が混じった茶色の瞳に見つめられた二人は背筋が自然に伸びる。

同じ年頃なのに、平和に包まれた自分達はひどく甘くて。

闇に生きている彼女たちの強さに少しだけ置いていかれた気分になる。


「強化して、押さえ込まなきゃならないわ。

その為に貴方たちを貴方たちの親友はここに連れてきたのよ。」

そう言って、スズランはナナセの方を見て、銀の少女はそれに微笑みを返す。


「じゃあ、ここには人間開発用の魔法陣があるの?」

そんな素直なアズキの問いに、ナナセたちは彼女たちのされてきた開発を想像し、重い空気に包まれる。


ナナセはアズキの手を固く握る。

─アズキは、そんなことされてきたんだ。


アズキの言葉は、嫌に生々しくナナセの心に突き刺さる。