ハルカはその頭上高くを軽々飛ぶ。

小さな頃から飛ぶことが大好きだった。
飛ぶのは得意だから、速さは誰にも負けないと自負する。


空からは町並みがよく見える。

王が代わってから、変わった景色だった。

冷たくなった。
寂しくなった。

昔の町の面影は、ない。


ハルカは、たくさんの町や村を見てきた。

たくさん見たのに、昔のあたたかな家はない。

綺麗で、冷たい家しかなくなった。

たくさんの規律で縛られた、見かけは平和な国。

魔術でたくさんの人と戦争をして、豊かな土地を手にいれた。

だけど、どれだけ頑張っても、平和は国民には帰ってこない。
戦争と親しい人の死が国民には与えられる。


小さな頃からそんなの町の様子を旅をしながらたくさん見てきた。

旅先で出会った年上の男の子が、戦争に駆り出され、帰らぬ人となったこと。
同じように旅をしていて魔術が得意な器用な女の子に出会い、その子の力を利用しようと追われていると知ったこと。


すべて、今の王になってから。どこかおかしいこの国。


アズキの家が見えてきた。

この冷たい町に似合わないような、昔の懐かしい雰囲気のある、あたたかい家だ。

ハルカはアズキの家を見つけると魔術を使い飛び降りる。

不意に、強い風が吹いた。

都合よく吹く風に、アズキの祖母はどうしたのかと不安になる。


意を決して家の戸を開いた。

いつもは簡単に開く軽い扉が、心なしか重かった。